270本目のゲームレビューです。
個人的な評価
89点
〇かなりの良ゲー
戦略SLG部分は好みが分かれるかもしれませんが、ストーリーが非常に面白く、ダンガンロンパシリーズが好きな人には間違いなくおすすめです。
『HUNDRED LINE(ハンドレッドライン) 最終防衛学園』とは
発売日・対応機種
発売日 | 対応機種 |
2025年4月24日 | Switch/PC(Steam) |
どんなゲーム?
ダンガンロンパシリーズの制作陣で設立したトゥーキョーゲームスが開発し、アニプレックスが販売する「極限×絶望」のシミュレーションADV
シナリオは、『極限脱出シリーズ』や『AI:ソムニウム ファイル』を手掛けた打越鋼太郎
感想など
※ 本レビューは多くのネタバレを含みます。
「極限×絶望」のシミュレーションADV
『HUNDRED LINE 最終防衛学園』は『ダンガンロンパ(以下「ダンロン」)シリーズ』制作チームが立ち上げたトゥーキョーゲームスが開発する完全新作の戦略シミュレーション+ノベルADVゲームです。
完全新作ではありますが、ダンロン制作陣の開発なので、絶望的状況下のサバイバル、小松崎類氏デザインの濃いキャラクター、ブラックでカワイイ不気味なマスコット、過激な下ネタやサブカル系パロディなど、随所にダンロン色が色濃く反映されています。




トゥーキョーゲームスは、同じくダンロンの精神を受け継ぐ『超探偵事件簿 レインコード』も開発(販売はスパイク・チュンソフト)しています。レインコードはダンロンシリーズと同じ、ミステリーノベルADVですが、本作は「理由もわからず集められた少年少女たちが、極限の状況を生き抜くために戦わされる」という絶望的な状況という設定で、同作よりダンロンシリーズを想起させる内容となっています。
圧倒的ボリュームのシナリオ
『HUNDRED LINE 最終防衛学園』のシナリオは、ダンロンシリーズの小高和剛氏と『Ever17』、『極限脱出シリーズ』、『AI:ソムニウム ファイル』などの名作ADVを手掛けたことで知られる打越鋼太郎氏の二人の共同で作られています。
内容としては、タイムリープを扱った複雑なストーリー構造や絶望的な状況下におけるブラックユーモアなど両者のセンスが見事に融合して非常に面白いシナリオになっています。
特に驚かされるのが、分岐シナリオの多さです。
本作は、「HUNDRED LINE」というメインタイトルが示すとおり、100ものシナリオルートが用意されています。
中には、短い物語で終わるルートもありますが、メインルートと言えるくらい重厚なシナリオが展開されるルートも多く用意されています。1周目クリアはまだ序盤で、数多くの分岐が発生する2周目からが本番といえるほどです。


私の場合、事前情報ほぼ無しでプレイしていて、1周目の80日目あたりで「もう終盤だー。終わるの寂しいー」などと能天気なポストをXにしてましたが、いやはやこの段階ではまだまだ序盤でしたね(^_^;)
ヴァニラウェアの『十三機兵防衛圏』も複雑なシナリオで「このゲームのシナリオ作った人狂っとる!(もちろん、いい意味で)」と思いましたが、本作はそれ以上にイカれてると思えるほど凄まじいシナリオの量です。




気になったのは、プレイヤーがもう薄々感づいてる真実について、それを明かすのにかなり引っ張るので、いざ真相が明かされても、タイミングが遅すぎるので「あーはいはい…やっぱりね。」ぐらいにしか思えず、激しく動揺する登場人物達に感情移入できなかったことです。
詰将棋のような戦略SLG
本作のシミュレーションバトルはバランスが荒削りながら、程よい手ごたえのある難易度で楽しめました。
限られた手数(AP)で、いかに敵の数を減らせるかという詰将棋のようなバトルですが、さらに突き詰めると「いかにして1ターンで敵を全滅、あるいはボスを撃破できるか」というパズルに近いです。
戦闘のバランスを崩すほど強力なのがアイテムと決死必殺です。
いずれも効果が非常に強力なうえに、APを消費せず使える点が大きく、活用すれば戦局を一気にひっくり返すことも可能です。
決死必殺は、使用するとVOLTAGEがチャージされるため、ボス戦では決死薬を飲んで瀕死になった仲間を特攻させてから、タクミかキョシカがたまったVOLTAGEとAPを全部使ってボスを叩くというのが私の鉄板ムーブです。
一方で、バトル面で気になった点は2つあります。
1つは、行動権がユニットごとではなく、部隊全体にAPとして共有されていることです。
これにより、部隊のAPを全て一部のキャラで使い切り、他のキャラの出番はなく、ほぼ空気となることが多かったです。個人的には1ユニットが1回行動するファイアーエムブレム式のほうが全ての仲間が活躍できて良かったような気もします(戦闘時間はさらに延びそうですが…)
2つ目は戦闘が長く回数も多いことです。
本作は、大量の分岐とルートがありますが、ストーリー上のバトルも多く発生します。恋愛編のようなほぼ番外編のようなシナリオルートで自由行動はなくてもバトルはあります。
1周目こそ楽しめた大将軍とのバトルもさすがに何度も何度もやらされればウンザリもしてきます。


一応、他のルートでやった同じシチュエーションのバトルはスキップできる機能はありますが、スキップできる分を除いても結構な量のバトルをこなさなければならないので、2周目以降は初見でもスキップできるかSAFETYよりさらに簡単にクリアできるモードを用意するくらいあってもいいかなと思いました。
クセの強いキャラクター達を紹介
本作には、10代の個性豊かな15人のキャラクターが登場します。
ここでは、各キャラについてストーリー・バトル両面での感想を述べていきます。
澄野拓海


本作の主人公。
基本的には好感の持てる人物ですが、プレイヤーの分身としては感情移入しづらい場面が多かった気がします。
察しが悪く、プレイヤーがとっくに分かりきってることに気づかないことが多くて、もやもやされることもしばしばありました。
バトルでは、5段階評価でオール4のような万能な性能。
シールド貫通のインパクトスタッブをMAXまで上げればボス相手にも活躍できます。
ほぼ全ての戦闘に参加するので真っ先に育てるべきキャラクターですね。
厄師寺猛丸


見た目通りのヤンキーなのでこの中では割と地味な印象です。
バトルは、意外に火力が低いの残念。
タンクとしても使いにくいです(そもそも、このゲームの仕様上、タンクの活躍の場が少ない)とはいえ、必殺技の範囲が優秀で、決死特攻役としては重宝しました。
雫原比留子


頼りになる裏ヒロイン。
1周目で活躍する場もほとんどなく退場してしまったのが悲しいですね。生きてれば1周目の大型ザコやボス戦で主力として活躍できたはずなのに…。
2周目以降にようやく本領発揮できますが、タクミが覚醒してるので、やはり出番は控えめでした。
飴宮怠美


いかにもダンロン的な強烈なキャラ。
本作の濃いキャラクター代表のようなキャラで、初期メンバーとしてバトルにも参加し、ストーリーでも存在感があります。
バトルでは火力は控えめながら特異科目で疲労を半分無効にできるので暴れまわりやすいです。
こいつも必殺の範囲が使いやすいので決死特攻役にさせることが多かったです。
蒼月衛人


メガネで武器が鎌というヤバい奴。CVも含めてヤバい。
バトルは火力が高いので雫原の抜けた穴を責任もって埋めてくれる強キャラです。
BPをつぎ込みましたが、その分ちゃんと活躍したので後悔はしませんでした。
川奈つばさ


どのルートに行っても規格外の技術力で多大な貢献を見せる超高校級エンジニア。
バトルも、機動力が高い上、特異科目で疲労にならないのでザコ処理が非常に優秀。
デスドライブを強化とバフで威力を4~6くらいにしたら、学校の周りをグルっと1周しながらザコを蹴散らしていきます。味方15人で出撃しようが、ザコだけなら彼女一人を動かすだけで終わります。
丸子楽


空気の読めないお調子者枠。
ストーリーでは余計な行動が目立ちますが、戦闘ではシンプルな特異科目と広範囲攻撃が便利。
バフは強いのですが、アイテムによるバフの方がAPを使用せず強力なのでサポート役はやや不憫かも。
九十九今馬


CVがシンジ君なので、ダンロンの狛枝枠かと思いきや、ただのシスコン生意気少年でした。
バトルは高い機動力とそこそこの攻撃範囲でザコ散らしの活躍は期待できそうでしたが、出番はあまりなかったです。
九十九過子


不思議っ娘属性の妹。
バトルは活躍できるシチュエーションが限られてるのであまり使いませんでした。
1発撃つと火力下がってしまうのが使いにくすぎです。
銀崎晶馬


ポジティブに自分を卑下するネタが面白い。
バトルではほぼ見せ場がなく、置物でした。
霧藤希


いまいち印象の薄いメインヒロイン。
戦闘では、唯一無二のスタン回復スキルが非常に優秀。
タクミの高火力必殺を連続で撃たせられるのはやはり強力です。
大鈴木くらら



ダルミ以上にインパクトのあるキャラ。
恋愛シナリオでは特に印象的で、個人的には同シナリオの3人の中で最も好きです。
戦闘はタレット設置型ですが、1ターンで敵を殲滅するスタイルの本作においてはあまり活躍の場はありませんでした。
凶鳥狂死香


ござる口調が特徴的な、どこか風来のシレンのアスカを思わせるキャラ。
大量の漫画パロディを披露してくれますが、元ネタが80~90年代の少年ジャンプ中心で、ややオッサン臭いネタが多めです。
バトルでは、ナナメ遠隔攻撃が非常に強力で、ボスの反撃範囲外から火力を出せる貴重なボスキラーとして重宝しました。
面影歪


医学薬学の知識がそこそこあるのでその方面で活躍。
狂ってそうで、実はまともそうで、やっぱり狂ってるキャラクターでした。
範囲デバフの性能は優秀ですが、本作ではそこまで切迫した状況に立たされることが少なかったため、真価を発揮する機会はありませんでした。
喪白もこ
ポジティブな空気を振りまくムードメーカー。
2周目で満を持して加入しますが、タンク役でそんなに強くないので少しがっかりでした
まとめ
『HUNDRED LINE 最終防衛学園』は、その名のとおり、100通りものエンディングが用意された、圧倒的ボリュームのシミュレーションADVです。
ADVゲーム全体で見ても、ここまでルート分岐とシナリオ量が膨大な作品は希少で、すべてのエンディングを見ようとすれば、相当な時間楽しめるはずです。
シミュレーションバトルにはテンポやバランス面で粗さもあるものの、それを補って余りあるだけのシナリオの面白さがあります。
ダンガンロンパの遺伝子を確かに感じさせながら、その集大成とも呼べる本作は、ADV好き好きの人には一度は触れてみてほしい作品です。
以上
『HUNDRED LINE 最終防衛学園』のレビューでした。
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