
282本目のゲームレビューです。
個人的な評価
83点
〇かなりの良ゲー
逆転シリーズファンはもちろんのこと、ミステリーADVが好きな人全般におすすめできます。
『山河旅探 - Murders on the Yangtze River』とは
発売日・対応機種
| 発売日 | 対応機種 |
| 2024年1月31日 | PC(Steam) |
どんなゲーム?
中国に拠点を置くゲーム開発スタジオであるOMEGAMES STUDIOが開発・販売するミステリーノベルアドベンチャーゲーム
感想など
逆転裁判ライクな推理アドベンチャー
『山河旅探』は中国の小規模なゲーム開発スタジオが手がけた、逆転裁判から大きな影響を受けた推理アドベンチャーゲームです。
殺人事件を捜査し、証人の証言のムジュンを突いて真犯人を暴くという逆転劇の展開は、まさに逆転裁判シリーズを彷彿とさせます。特に、場面に応じて変化する緊張感あるBGMなどがその影響を色濃く感じさせるポイントです。




一方で、捜査パートの操作感は逆転裁判のようなポイント&クリック式ではなく、キャラクターを左右に移動させて調べる形式となっており、これは逆転検事に近いスタイルです。


登場キャラクターは逆転シリーズほど極端に誇張されたアクの強さはありませんが、個性豊かです。
主人公のシェンはシャーロック・ホームズを思わせる冷静沈着な探偵で、助手のアフウは科学の知識に明るく場を和ませる存在というバランスの取れたコンビとなっています。


本作は、逆転裁判から影響を受けつつも単なるまるパクリなどではなく、十分に独自性を満たし、オリジナルのリスペクトも感じられる中国製逆転裁判となっていると感じられました。
日本語化について
『山河旅探』は、本記事の執筆時点でPC(Steam)専用かつ対応言語は中国語と英語のみで、日本語には対応していません。

そこで私は、有志のkazamidori氏が公開しているSteam版日本語化MOD
(リンク)を導入してプレイしました。
このMODは、XUnity.AutoTranslatorという外部翻訳ツールによって機械翻訳されたテキストを手動で修正したものです。
導入はやや手間がかかりますが、翻訳の質は非常に高く、機械翻訳にありがちな直訳やニュアンスが変な文はほぼ見当たりません。自然な言い回しの日本語で違和感なくゲームに没入することができます。
また、本作のゲームファイル内には未使用の日本語データが含まれているらしく、将来的に公式日本語対応が行われる可能性は高いと思われます。ただし、仮に実装されたとしても、有志翻訳ほどのクオリティに達しない可能性もあります(それだけ有志日本語MODの翻訳は優秀)
あと、本作はフルボイスではありませんが大部分にボイスが挿入されます。さすがにこちらは、日本語吹き替えまでされてはいませんが、本作のボイスは、舌戦での早口の中国語によるまくし立てや、場所と相手によって英語で会話する多言語混在のシチュエーションなど、言葉の演出面が光っており、むしろ吹き替えせずに楽しむほうが良いかもしれません。


公式日本語対応を待つのもアリですが、現時点で、この有志日本語化MODの完成度が高いので、こちらを導入してのプレイがおすすめです。
ただし、MODの導入はあくまで自己責任で行ってください。
舞台は清王朝末期の中国
『山河旅探』は、20世紀初頭、清朝末期(1910年前後)の中国を舞台としています。
風景は中国水墨画のようなタッチで描かれ、列強による圧力の中、西洋化が進みながらも伝統が色濃く残る、哀愁漂いつつ情緒ある世界観が表現されています。




また、当時の歴史的背景も史実に基づいて物語に取り入れられています。
外国から流れてくるアヘンの蔓延をはじめとして、漢陽鉄廠での製鉄事業、科挙制度の廃止、蝋管型蓄音機の普及など20世紀初頭における中国清朝の産業・文化・社会問題が丁寧に描かれており、単なる雰囲気だけではなく、しっかりと時代考証がなされています。
特に、テキスト中にこうした歴史的用語が出てくると、その用語の史料や豆知識を確認することができるようになっています。これらの史料は、日本語訳もとても素晴らしく、詳しく解説されていて19世紀から20世紀初頭にかけての歴史の理解が一層深められる内容になっています。
リアル路線のミステリー
ミステリーは、昔から世界中で親しまれてきたジャンルですが、近年はその核となる殺人や密室のトリックが、出尽くし、枯渇しているという問題があります。
このため、特にゲームでは、逆転裁判やStaffer Case(ステッパー・ケース)のように霊能力や超能力といったフィクション・ファンタジー要素を取り入れることで、現実では不可能な大胆なトリックを生み出そうとする作品が多くなっています。
一方で『山河旅探』は、そうした超常的な力には頼らず、登場人物達もあくまで一般人の範囲に収まる現実路線の描写が貫かれています。
現実的な方向の話にすることで物語に感情移入はしやすくなった一方で、殺人・密室のトリックは、やはり既視感があり、途中である程度予想のつくものが多かった気がします。
ただし、開発側もそこはある程度織り込み済みなのか、タネ明かしは比較的あっさりしており、必要以上に引っ張って焦らすような展開にはなっていません。

また、個人的に良かったと感じたのは、証拠や推理を提示する際、正解でなくてもニアミスなら減点されない点です。逆転裁判では、プレイヤーの推理が先走りすぎて、後で出すべき証拠を先に出してしまいペナルティを受けるという理不尽さがしばしばありましたが、本作ではそのようなことはあまりおきません。
万が一困った時にはヒントも見られ、それでも詰まれば答えを見ることも可能です。
全体的に、「ゲームとして解かせる」よりも、「物語として体験させる」ことに重きを置いた設計になっている印象です。
シナリオの感想(ほんのりネタバレ注意)
『山河旅探』の物語は、全章を通して見れば非常に完成度が高く、素晴らしいシナリオでした。
ただし、物語が本領を発揮するのは後半からで、1章と2章は、それなりに面白いとは思ったもののキャラクターが薄味すぎて逆転裁判と肩を並べるほどではないかなぁという程度の感想でした。
しかし、章が進むにつれ、キャラクターの個性も際立っていき(それでも逆転ほどではないけど)話の内容もグッと面白くなってきます。
特に3章から登場する女性記者のウェン・コウシンは3人目の主役とも言える活躍ぶりで本作に華を添えてくれました。

中でも一番良かったお話は、やはり最終章です。
圧倒的な窮地に立たされた状態から一気に大逆転する展開は最高でした。
特に私か良いと思ったのは中国側の裁判長の存在です。
最初はどこかやる気のない態度だったのが、段々と正義に目覚めて悪に裁きを与える姿は格好良かったですね。




まとめ
『山河旅探』は、逆転裁判シリーズからの影響を随所に感じさせつつも、単なるクローンにはとどまらず、自分だけのスタイルをしっかりと確立した作品です。
中国清朝末期という舞台は新鮮で、中国の歴史や社会の一端が丁寧に描かれており、とても興味深く楽しめました。
序盤は印象の薄かったキャラクターたちも、物語が進むにつれて魅力が増し、最終的には強く印象に残る存在へと変わっていきます。
本作は、ミステリーファンであれば、間違いなく楽しめる一本といえるでしょう。

以上
『山河旅探』のレビューと感想でした。
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