
286本目のゲームレビューです。
個人的な評価
82点
〇良ゲー
打越鋼太郎氏は執筆にほぼノータッチらしいですが、しっかりとAI:ソムニウム節なシナリオになっていたのは良かったです。
シリーズ2作品をプレイした人なら問題なく楽しめるでしょう。
『伊達鍵は眠らない ‐ From AI:ソムニウムファイル』とは
発売日・対応機種
| 発売日 | 対応機種 |
| 2025年7月25日 | Switch/PC(Steam) |
どんなゲーム?
スパイクチュンソフトの『AI:ソムニウムファイル』シリーズのスピンオフ作品となる謎解き推理アドベンチャーゲーム
感想など
AI:ソムニウムシリーズのスピンオフ
『伊達鍵は眠らない』は、スパイク・チュンソフトによるミステリーADV『AI:ソムニウムファイル』シリーズのスピンオフ作品です。
本作では、シリーズ1作目の主人公「伊達鍵(だてかなめ)」と相棒である眼球型AI「アイボウ」のお馴染みのコンビが正体不明の自称レプテリアン「明美」に攫われたネットアイドル「左岸イリス」を救出するため奮闘します。
物語序盤は伊達側の視点とイリス側の視点で交互に描かれる構成となっており、伊達パートではいつもの現場捜査やシンクによるソムニウム世界への介入、イリスパートは、本作の新要素である脱出ゲームをプレイします。


伊達による現場捜査は前2作とほぼ同じプレイ感で、おなじみの場所、おなじみの人達も多数登場し、前作の主人公であるみずきと龍木も顔を見せます。しかし、龍木ってやっぱり主役張るには地味というか力不足なキャラクターでしたね…。
キャラごとのシリーズ恒例ネタやネタバレが含まれるため、本作プレイ前に前2作(特に1作目)をプレイしておいたほうがずっと楽しめるでしょう。
人の深層心理の世界にシンクによって入り込み、アイボウを操作して探索するソムニウムパートも当然あります。
奇想天外なリアクションは相変わらず面白いですが、理不尽さも相変わらずです。

なお、本作のシナリオは、これまでシリーズのディレクターとシナリオを手がけていた打越鋼太郎氏ではなく、スパイク・チュンソフト所属の山田和也氏が担当しています。
シナリオ担当が変わったことによって、キャラ設定が崩壊した二次創作のようになってしまわないかという不安があるかもしれませんが、本作において、そうした心配は無用です。
いかにも伊達やアイボウが言いそうなセリフはそのままですし、ベタなギャグやパロディ、そして当然、下ネタも健在です。
これまでのシリーズのファンであれば安心して楽しめる内容に仕上がっています。

イリスパートは脱出ゲーム
『伊達鍵は眠らない』のイリスパート(脱出パート)では、今や婚活デートで映画館と並ぶ定番スポットとなった体感型脱出ゲームをプレイします。
基本的にはリアル脱出ゲームのような謎解きををイリスを操作して解いていくわけですが、ゲームならではの大掛かりな仕掛けで楽しませてくれます。知識とひらめきを頼りに進行していくためソムニウムパートのような運任せの理不尽さも少ないです。

気になったのは、難易度スタンダード以下の場合、周囲のキャラクターがすぐにヒントを与えてくることです。
実際の脱出ゲームでも、こちらがまだ考えてるうちに先に解いた連れが聞いてもないのに横からヒントを言い出すと興醒めしてしまうものですが、それと同じです(婚活デートでやれば破局です)
私は難易度スタンダードでプレイしましたが、難易度を上げればこのお節介なヒントも少なくなるらしいので難易度ハードにしたほうが良かったかもしれません。

ストーリーの感想
ストーリーについては、ネタバレをガッツリ含むため、以下の折りたたみテキストにまとめています。
クリアまではおよそ15時間でしたが、シナリオ全体としては、いくつか気になる部分もありつつ、全体的には楽しめる良作にまとまっていたと感じました。
序盤から中盤にかけては、素直に楽しめた場面もあった一方で、やや白々しい展開が続き、没入しづらく感じられた場面もありました。しかし終盤にかけては物語が盛り上がりを見せ、最終的には満足できる水準のストーリーになっていたと思います。
良かったと感じた点は、シナリオ執筆者が交代したにもかかわらず、これまでのAIソムニウムらしい台詞回しやギャグが健在だったこと、そして最終的に誰も悲しまない後味の良いハッピーエンドに収まった点です。
次に気になった点ですが、本作では物語の伏線やミスリードの設置が正直下手っぴです。そのせいで、ある程度展開が見えてしまい、意外性に乏しいシナリオになってしまっています。
たとえば、序盤に登場する朝陽の行方不明事件のポスターや、日菜の不審な挙動などは、事件の核心に彼女たちが関わっていることを示唆する伏線です。しかしこれらがあまりにも露骨で、念を押すように何度も登場するため、もはや伏線が全然伏してない状態になっていました。
伏線というのは、それまで意識されていなかったものが、回収された瞬間に「あの時のあれか!」と繋がってゾクッとするのがいいのです。それを本作は「ここ重要です!絶対覚えてくださいね!」といわんばかりの念押しが目立ち、あからさまに意図が透けて見えてしまいました。個人的には、こうした過剰な誘導がかえって白けてしまいました。
伏線はもっと巧妙に隠し、ミスリードなども設置して、展開の予想がつかない構成にしておけばよかったと思います。
もう一つ気になったのは、一連の事件がどこか身内の茶番のように感じられてしまい、「殺されるかもしれない」という張り詰めた緊張感が薄かったことです。
特に、医療ポッドのシンクやA-set脱出ゲームなどが、大きな陰謀などではなくボスやアイボウ、みずきまで加担していた仕込みだと判明した瞬間、正直かなり興ざめでした。
たしかに、明美がイリスの足にギロチンを仕掛けたり、爆弾を仕込んだりと危機感を演出しようとしていた場面もありますが、どれも本気度が感じられず、命を賭けたスリルというより演出感が強く、冷めた目で見てしまいました。
結果的に、前2作で感じられたような本当にヤバいかもしれないというハラハラドキドキ感はあまり得られず、明美が何をしようといまいち緊張感が持てなかったのが残念です。
たとえば、プロローグなどでこの謎解きゲームの挑戦に失敗したモブでも犠牲にしていたら、「これは本当に命が懸かってるんだ」と感じられ、より緊迫感ある展開になったのではないかと思います。
このように、本作のシナリオライターは『AI:ソムニウムファイル』らしい空気感や、ギャグのセンスには光るものがありましたが、シナリオ全体の構成力という点では、まだまだ甘さが残ると感じました。
まとめ
『伊達鍵は眠らない』は、スピンオフらしくコンパクトなボリュームにまとまっていましたが、『AI:ソムニウムファイル』シリーズならではの世界観やキャラクターの魅力はしっかりと詰まっており、改めてこのシリーズの良さを再確認できる内容でした。
シナリオには一部不満点もありましたが、伊達やアイボウをはじめとするおなじみの面々との楽しいやり取りをまた見られたのは素直に嬉しかったです。
このシリーズには今後も長く続いてほしいので、続編でもスピンオフでも、次なる新作の発表を期待しています。

以上
『伊達鍵は眠らない』のレビューと感想でした。
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